killer instinct (MotoGP 2013 Round-1 QATAR)
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 ”ずっとこれがやりたかったんだ”
 
 一瞬の決断、勇気、そして己の技術とマシンに対する絶対的な信頼

 ダニ・ペドロサを、そしてマルク・マルケスのインを差していくバレンティーノ・ロッシの走りは自信に満ち溢れていた

 2月のセパン、明るさを取り戻したロッシは2日目にはトップタイムをたたき出すなど、その”復帰ロード”は傍目には順調この上なく写っていた

 しかし、この2年間で彼の心の奥底に刻まれたトラウマは、思いのほか深いものだった

c0041105_22531145.jpg カタールでのナイトレース…
 決して得意とは言えないこのコースで、それでもロッシはスタート直後から勇気を振り絞った

 7番手グリッドからまずまずのスタートを決めると、直後にはステファン・ブラドルを、次にカル・クラッチロウをイン側から抜き去ると、目の前にいるのはこの2年間、自分を苦しめ続けてきたイタリアンレッドのマシンだった

 ドゥカティでの自分と決別するかのように、猛然と1コーナーでアンドレア・ドヴィツィオーゾのインに飛び込んだロッシ

 しかし、そのラインはかつての彼がトレースしていたそれよりもわずかにワイドになってしまった

 ライン上にいたペドロサとの接触を避けるため、大きく減速したロッシが戻ったのはブラドルの後ろだった

c0041105_22534013.jpg ほんの1ラップ前には一回で仕留めたブラドル
 しかし、1コーナーでの出来事が忘れかけていたトラウマを思い出させた

 ”やっぱり…ダメなのか…”

 ヘルメットの中で自問自答を繰り返すように、ブラドルの後ろでもがき続けるロッシ
 この2年間で何度も裏切られた”フロントまわり”に対する恐怖を振り切れないまま、ラップだけが経過していく…

 かつての絶対王者の、グランプリ史上最高のエンターテイナーの”瀬戸際”を、世界中が固唾を呑んで見守る中、ついにロッシが動いた

 ブラドルのインをバックファイヤを吹き上げて抜き去ったロッシは、さらにスピードを上げ2位争いに猛然と迫っていった

 そのネコ科の動物のように、しなやかかつ獰猛なライディングスタイルは、まさしくバレンティーノ・ロッシそのものだった

c0041105_2254772.jpg ダスティなストレートで砂塵を巻き上げながらも、1コーナーのブレーキングでクラッチロウを撃墜すると、S字ではわずかに開いたペドロサのインの迷わず飛び込んでいった

 そして必死の抵抗を見せるマルケスに対しても最後までスキを与えなかった

 かつて、”ホンダが速いんじゃなく、自分が速いんだ”ということを証明するために敢行した同じ”ヤマハ移籍”で、今度は”自分が遅かったんじゃなく、ドゥカティが遅かったんだ”ということを証明したロッシ

 本能のライディングとフロントへの信頼を回復した彼は、同時にパドックでの尊敬も取り戻した

 しかし、彼が本当に取り戻さなければならないモノは、この日トップでチェッカーを受けたチームメイトが持っている…

 ロッシの復活劇は、まだ始まったばかりだ
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by taros_magazine | 2013-05-05 14:51 | motorcycle diary


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