"myth" (MotoGP 2011 Round-10 United States)
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 1970年代、ケニー・ロバーツの登場がその幕開けだった

 ヨーロピアンが集う”クラブ”の中で、その発言やパドックでの過ごし方、そして何よりその突出した速さから”異星人”と称されたこのアメリカ人の成功こそが、その神話の始まりだった

 そのケニーと入れ替わるように現れたフレディ・スペンサーは、まさにその神話を具現化したライダーだった

 コース上で見せる誰にも真似することのできない圧倒的なライディングと、それに相反するように繊細でミステリアスな私生活…彼もまた神話だった

c0041105_2343930.jpg ほどなくグランプリ最高峰は、アメリカ人の独壇場となった

 100キロ少々の車体とプアなタイヤ、そこに搭載されたピークパワー重視のエンジン…そんなモンスターマシンを、エディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ケビン・シュワンツらはまったく苦にしないどころか、そのコントロールを楽しんでいるかのように操り、勝ち続けた

 『ダートトラックをルーツに持つ彼らならではの速さだ』

 『いや、AMAの荒れた路面での経験が活きているんだ』

 『無駄にコーナーリングスピードを追求せず、ラップタイムをトータルで稼ぐという発想こそ画期的だ』

 彼らの速さを目の当たりにするたびに多くの人が様々な考察をしてみせたが、そこで交わされるどんな説も彼らの異次元の走りを裏付けているようには思えなかった

 ”アメリカン神話”

c0041105_235683.jpg 突如として現れては驚異的な速さを見せつけ、涼しい顔で勝利をさらっていくアメリカン達…いつしか彼らの母国を”神話の世界”としてとらえることが、彼らの速さを説明できる唯一の理論になっていった

 しかしジョン・コシンスキーを最後に、神話といえるほどの衝撃を与えるライダーは現れなかった
 そして神話は南半球やラテンの国のライダー個人へと移り変わっていった

 そんなミック・ドゥーハンの王朝以降、グランプリでは目にすることのできなくなったこの神話の久々の継承者を、ある日ワールド・スーパーバイク選手権で目撃した

 スポット参戦でのいきなりの勝利、ワークスのエース、トロイ・ベイリスを豪快なドリフトで追い詰めるライディング…
 ベン・ボストロムはまさしく神話の国からやってきたライダーに見えた

 しかしベイリスやコーリン・エドワーズ、さらには後輩のニッキー・ヘイデンがMotoGPにコンバートしていく中、マシンやスポンサーという”現実”の部分でほんの少し運が足りなかったボストロムは、WSBからAMAへと静かに戻っていった

c0041105_2352770.jpg その彼が10年の時を経て遂に上がってきた最高峰の舞台…しかしそこに用意されていたのはあまりに無情なシナリオだった

 Moto2の王者をもってしてもブービーが御の字というマシンをシェアしての参戦…

 フリー走行・予選と後方から迫ってくるレギュラーライダーの邪魔にならないことだけに神経を使いながら過ごし、『せめて決勝だけでも気持ちよく』と臨んだレースも、コースアウトした後はマシンをいたわるかのように走り、そしてチェッカーをあきらめてピットへと戻っていった

 ”10年前だったら…。せめてプラマックかグレシーニのマシンだったら…”
 
 いや、おそらく結果は大きくは違わなかっただろう  

  ”アメリカン神話”

 それは、類まれな才能と時の運に恵まれた一握りのライダーの輝きが創り出した”幻想”だったのだろうか?

 あるいは、もうひとりの”ベン”による第二章があるのだろうか
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by taros_magazine | 2011-08-27 23:08 | motorcycle diary


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