Runaway Boy (MotoGP 2011 Round-3 PORTUGAL)
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 ホルヘ・ロレンゾは、その瞬間まで思っていただろう
 
 『ダニのペースはそのうちに落ちる』と

 スタート直後から、わずかコンマ1秒ほどのディスタンスでへばり付いてくる同郷のライバルよりも、むしろ開幕戦で圧倒的なパフォーマンスを見せたケーシー・ストーナーこそが、最も警戒しなければならない”直接対決”の相手になるはずだった

 そのストーナーも同じマシンに乗るかつての同門のライバルよりも、むしろマシンパワーではハンディキャップを負っているはずのヤマハでカタールでただ一人食らいついてきたロレンゾこそが、最も逃がしてはならないターゲットとして見ていただろう

 ところが5ラップ、10ラップが過ぎても、ダニのペースは落ちない
 
 いつもと違うダニ・ペドロサに業を煮やしたロレンゾがペースを上げても、手負いのスパニッシュはまったく離されなかった

 それどころか無理にブロックするわけでもなく、ストレートエンドでもインを空けているのに、ペドロサは彼の本来のスタイルである”逃げ”を放棄したかのように、静かにロレンゾの背後で様子をうかがっているようだった

 そんな2人のスペイン人のペースに悲鳴を上げたのはストーナーだった

 落ちてくるはずのペドロサに幻惑されたかのように不安定なライディングに陥ってしまった彼は、中盤を過ぎると”因縁のライバル”であるバレンティーノ・ロッシ、そしてオフには一時シート争いを演ずることになった相手のアンドレア・ドヴィツィオーゾの2人のイタリア人が繰り広げる4位争いとの間隔をキープすることが先決となってしまった

 15ラップ、20ラップ…

 まだロレンゾの背後にはペドロサがいた

c0041105_14465733.jpg これまで何度も同じように後ろからペドロサを”料理”してきたロレンゾは、それでも自らのライディングスタイルを変えなかった

 『自分の信じるペースで走りきれば、きっとダニは…』

 しかし25ラップ目、ロレンゾのその確信が不安に変わった

 自身が最も得意とするストレートエンドでのハードブレーキング…
 
 敢えて無理なブロックをせず、今度は背後から追い詰めるべくほぼ無抵抗でペドロサにオーバーテイクを許したはずのロレンゾだったが、ペドロサの後姿はコーナーごとに小さくなっていった

 自らの完全な誤算で勝利を逃すことになったロレンゾは、ここで初めて今日最大のライバルになるはずだったストーナーとの差を計算するハメになった…

 逃げて逃げて、そして逃げ切って勝ってきた

 でもずっと競り負けてきた

 意地だけで飛ばして、最後には力尽きていた…

 それでも、ペドロサは純粋に速く走ることで勝とうとしてきた

 特にこの1年ほどの彼の走りは、まさに魂のライディングと呼べるほど気迫を前面に押し出してのものだった

 そんな走りを続けていたからこそ、この日見せたような本当の速さを身につけることができたのだろう

 そんな純粋さを持ち続けていたからこそ、この日見せたような本当の強さを手に入れることができたのだろう

 遂に壁を乗り越えたダニ・ペドロサは、どんなバトルになろうとも、誰が相手であろうとも、決して”逃げ”たりはしないだろう
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by taros_magazine | 2011-05-05 15:11 | motorcycle diary


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