Aesthetics (MotoGP 2010 Round-18 VALENCIA)
c0041105_2314957.jpg
 ホルヘ・ロレンゾの速さを誰よりもよく知っているのは、ほかならぬバレンティーノ・ロッシだ

 同じマシンに跨り、同じタイヤを履き、何度も何度も一番近いところでその走りを見てきたロッシだから、ロレンゾがいかに凄まじい走りをしているのか身にしみて知っていた

 だからこそ、最後にもう一度その彼に勝ちたかった
 同じパッケージで走る最後だからこそ、自分の走りでホルヘ・ロレンゾという怪物を相手にどこまで戦うことができるのかをどうしてもハッキリさせたかった

c0041105_2322066.jpg 今シーズン、これまでならモチベーションを失ってしまっていたであろうほどスタートで出遅れても、キレのある走りで徐々に順位を回復し、前方にチームメイトを確認すると、予選でフライングラップを決めたマルコ・シモンチェリをアウトから豪快にオーバーテイクし、一気に勝負に出た

 ケーシー・ストーナーを前に、ダニ・ペドロサを後ろに従えてランデブーしながらも激しく火花を散らすロッシとロレンゾ…

 しかしその結末は、まるで前戦のリプレイを見るようだった

 わずかに空いたロッシのインにロレンゾがためらわずに飛び込んだ瞬間、ロッシには”退く”という選択肢しか残されていなかった

 その後も逃げるストーナーをロレンゾが追い詰めていく一方で、ロッシはジリジリとその2人から離されていった…

 それは不思議なほど爽快な敗北だった
 恨み節も言い訳もない、完全な敗北だった

 でも、もしかしたらこういう負け方をいちばん望んでいたのは、当のロッシ本人だったのかもしれない

 自らのマシンにだけ次々とトラブル襲いかかった2006年…
 圧倒的なタイヤの性能差に手も足も出なかった2007年…

 しかし、それが単なる”エクスキューズ”でしかないことを、ロッシ自身ははわかっていたのではないだろうか?

 かつての自分がそうしてきたように、ただ速く走った者こそが王者となる…
 だからこそ、前戦のエストリルでロッシは壮絶な走りを見せた

 自らのケガがロレンゾにタイトルをもたらしたのではなく、今シーズン誰よりも速かった者が王者になったのだということを自ら確認するために、そして彼が愛して止まないグランプリの理想の姿と、王者たる者の誇りを誰の目にも明らかにするために…

 この日も完敗したロッシがフィニッシュラインを通過して最初に感じたのは、タイトルへの未練でも、勝利できなかったことに対する失望でもなかった

 彼の時代を支えたYZR M1…
 コースサイドにその愛機を止めると、その前にひざまづきフロントカウルを愛おしそうに撫でた。頬を寄せ、何度も何度も…

 完璧な敗北と美しい別れ…

 その先にあるのは、希望なのか、それとも…

c0041105_23255100.jpg

[PR]
by taros_magazine | 2011-02-20 23:15 | motorcycle diary


<< "BLACK HOL... The End (MotoGP... >>