Cold Wind (MotoGP 2010 Round-16 AUSTRALIA)
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 フリー走行:0.757秒
 予選:0.668秒…

 ケーシー・ストーナーが土曜日のそれぞれのセッションで2番手のライダーに対してつけたこの驚くべきタイム差に、他のすべてのライダー達は決勝レース前に早々と”白旗”を揚げてしまったようだった

c0041105_10385085.jpg ウォームアップでは2番手のマルコ・シモンチェリから10番手のミカ・カリオまでが1秒以内だというのに、当然のようにトップタイムをたたき出したストーナーは、そのシモンチェリの先1秒890という途方もない彼方にいた

 そして何よりこのタイムシートが如実に物語っているのは、今まさに大きな時代の節目が訪れている、ということではないだろうか?

 これまでもストーナーが驚異的な走りを見せることは何度もあった
 タイトルを獲得した2007年シーズンにはそれこそ”圧倒的”な速さ・強さを見せつけての戴冠だった

 それでも、それでも彼の速さの”真実”を見抜くのは容易なことではなかった
 
 確立された”勝ちパターン”を頑なに実践するそのスタイルと、王座を失った2008シーズンに見せた競り合いでの脆さ…

 そして台頭してきたホルヘ・ロレンゾという強烈なキャラクターの持ち主に対し、わずか3年前の王者という肩書きをもってしても”埋没”してしまった感は否めなかった

 しかし、その速さ・強さは錆付いていないどころか驚くべき進化を遂げていた

 決勝レースでは、タイトルを決め重石を下ろしたロレンゾのフルアタックを、ストーナーはまったく問題にしなかった

 彼だけが違うスペシャルタイヤを履き、違う排気量のマシンを走らせているかのように、本気でチェイスしている"New Champion"を置き去りにし、長いストレートを颯爽とウィーリーで駆け抜け、チェッカーを受けた

 この2人、ストーナーとロレンゾの勝負だけなら、『ストーナー、地元で圧勝』というフレーズで結ばれるだけのレースだった

 しかし、このレースから感じた”時代の節目”の本質はそれではない

 マレーシアGPがそうだったように、寝たフリをしていてもバレンティーノ・ロッシがこの抜群の相性を誇るサーキットでも勝利を狙ってくることは明らかだった

 しかし金曜日からすべてのセッションで中位に埋もれ、決勝でもベン・スピーズをやっとの思いでオーバーテイクし、食い下がるニッキー・ヘイデンにはもてぎの時のような"T-Bone アタック"でなんとか表彰台をキープするのがやっと…
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 そこには"Living Legend"としての誇りも、このスポーツ史上最大のスターであるという輝きもまったく感じられなかった

 だからこそ、スピーズやヘイデンはロッシに対しても接近戦をまったくためらわず、表彰式ではロッシがまるでそこに居ないかのようにストーナーとロレンゾは2人で盛り上がっていたのだろう 

 去年のここでのストーナーとのスーパーバトルが幻だったかのように、まったく存在感を示すことなく静かにポディウムから去っていったロッシ…

 バレンティーノ・ロッシという”ブランド”が守り続けてきたのは、彼の富や名声だけではない
 時にそれは若いライダー達にとってはコース上で”結界”として機能してきた

c0041105_1041258.jpg しかし、目に付くようになってきたラフな走りと時折見せてしまうモチベーションの低下がそのブランドの価値を下げてしまえば、もう誰もロッシに遠慮などしないだろう

 傾きかけた太陽の下、フィリップアイランドの寒風がロッシの背中に容赦なく吹きつけた


 

 
 
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by taros_magazine | 2010-10-28 10:44 | motorcycle diary


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