"4 Challengers" (MotoGP 2010 Round-8 GERMANY)
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 その直後、国際映像に映し出されたアルベルト・プーチの表情がすべてを物語っていた

 いつものように厳しい表情ではあるものの、その眼差しには明らかな動揺がうかがえた…

 もはや手がつけられないほど圧倒的な速さを見せ続けているホルヘ・ロレンゾに対し、ミリ単位のテール・トゥ・ノーズで最終コーナーを抜けると、ストレートでマシンを接触寸前まで真横に寄せ威嚇しながら前に出て、そのまま信じられないほどのレイトブレーキで1コーナーへ飛び込んでいったダニ・ペドロサ…

 明らかに彼の”芸風”でない激しい競り合いでロレンゾを追い詰め、そして抜き去ったペドロサの走りは、おそらくプーチが考える”レース”というものの定義から大きく逸脱したものだったのだろう

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 そのままなす術なくジワジワと引き離されていったロレンゾもまた、彼の本来の姿ではなかった

 いつもの傲慢な速さはすっかりと影を潜め、ギクシャクとした小さなライディングで2位に甘んじる彼の姿…

 それは、このパーシャルレンジの多いストレスの溜まるサーキットのせいだけでなく、どこまで本来の速さを取り戻しているのかわからない、背後にいるはずのバレンティーノ・ロッシの影に神経をすり減らしているようだった

 そしてもう一人、いつもと違う心理状態でレースに臨んでいるライダーがいた

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 バレンティーノ・ロッシは、その長いキャリアの中でもおそらく数回しか経験したことのない感覚でこのザクセンのレースを走り始めただろう

 『たぶん…勝てないだろう』

 マックス・ビアッジやセテ・ジベルノーがライバルだった頃とは比較にならないほど勝つことが難しい今、このフィジカル・コンディションで表彰台の頂点に立つことがいかに厳しいか…それはロッシ自身も十分に自覚していただろう

 そんなときロッシがどういう走りを見せるのか?

c0041105_1030737.jpg しかしロッシはあくまでもロッシだった

 前にいるライダーを一人でも多く抜き去る、コンマ1秒でも削れるものは削り、可能な限り速く…

 タイトルやポイントという”邪念”から解き放たれたロッシは、かつてのような純粋にレースを、そしてバトルを楽しむ”チャレンジャー”の姿を取り戻した
 
 さらに最終ラップにはケーシー・ストーナーの手荒い”復帰祝い”もあり、結果的にはこのレースを最高のリハビリとして終えることとなった

 切れ味を増したペドロサ、コンディションを取り戻したストーナー、そしてランキングトップに君臨するロレンゾ…

 これまで常にロッシという王者に対し”挑んできた”この3人は、この日から”最強の挑戦者”と化したディフェンディング・チャンピオンの追撃を受けることになった

 それを、ロッシの本当の凄さを身をもって知るという”至福の瞬間”であると思えるライダーこそが、ロッシの時代を終わらせることができる”真の王者”になるだろう
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by taros_magazine | 2010-08-14 10:26 | motorcycle diary


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