そのレーサーが”本物”かどうかを見抜く方法は、案外簡単なことなのかもしれない
たとえば、『速いヤツは何に乗っても速い』という、誰もが実感している”格言”がある
125、250、そしてMotoGPはもちろん、市販車4ストロークの8時間耐久までも制したバレンティーノ・ロッシ
そしてそのロッシと同じようにヤマハ、ホンダと渡り歩きながらタイトルを獲得し、そして平忠彦に8耐のトロフィーを与えたエディ・ローソン
ウェイン・レイニーは毎年のようにタイヤメーカーを変えながら王座に君臨し、フレディ・スペンサーは1シーズンに250と500の両方のタイトルを獲得するという離れ業を演じてみせた…
そしてもう一つ、そのレーサーの資質を知る方法がある
それは『速いヤツは最初から速い』という厳然とした事実だ
88年鈴鹿のケビン・シュワンツの衝撃、同年鈴鹿8耐のミック・ドゥーハンの驚異
2006年LCRホンダでロッシに一歩も引かないバトルを見せたケーシー・ストーナー、MotoGPデビューレースから3戦連続ポール・ポジションのホルヘ・ロレンゾ…
彼らはいずれも規格外のファーストインパクトを見せつけた
では、このライダーの”資質”は一体どうなのか?
5位でフィニッシュラインを通過した直後、両手で顔を覆ったダニ・ペドロサ…
”宿敵”ロレンゾと”最大のライバル”ロッシはおろか、チームメイトの”セカンドライダー”も抑えきれず、最後にはかつて自らがチームの”エースの座”から追い落としたニッキー・ヘイデンにさえかわされてしまった
『逃げが決まれば無類の速さを発揮するものの、混戦になると常に一歩引いてしまう』
レースを重ねることに大きくなるそんな風評に抗うように、昨シーズン終盤から敢えて厳しいアタックやブロックを見せ、このレースでも序盤から闘志剥き出しの激しい走りを見せていたが、またしてもそれは裏目に出てしまった…
”4強”の一角を占めながらも、強烈な個性の他の3人に比べ、どこか”規格”を感じさせる”優等生”…
でも、もしあの時、今のような激しいファイティング・スピリットを見せていたら…
MotoGPデビューレース、地元スペイン、ヘレス
ラップタイムで上回りながら、射程距離に入りかかったロリス・カピロッシを見送ってしまったあのレース…
もしもあの時、カピロッシを本気で攻めていったら…
あのレースで、勝利に対する執念を周囲に、そしてロッシに見せつけていたら…
抜くことができなかったとしても、たとえ転倒してしまったとしても、その後の彼の走りの質とライバル達の目の色は違っていたのではないだろうか?
セカンドグループで経験を積んで、徐々に速さを増していくタイプのライダーがタイトルを獲得することなど、今のグランプリではよほどの幸運に恵まれない限り無い
ペドロサが持っているのは”幸運”なのか、それとも”天賦の才”なのか、いや、あるいは…
彼が今のように激しい走りを続けていけば、その答えは遠からず明らかになるだろう