"pay back" (MotoGP 2009 Round-15 AUSTRALIAN GP)
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 ホルヘ・ロレンゾのクラッシュ、そしてリタイヤを確認したバレンティーノ・ロッシには、この日その決して短くないキャリアの中でも最高と言えるほどパーフェクトな走りを見せるケーシー・ストーナーを追いかける理由などないように思えた

 何度となくその後遺症に心身を蝕まれてきた2006年のエストリルほど切迫した状況でもなければ、『2位は悪くないリザルト』と自らに言い聞かせるように何度も口にした昨シーズン序盤のように先が見えない時期でもない

 チャンピオンシップポイントで”1レース差”にまで追いすがってきた最大にして唯一のライバルである”壁の向こうのチームメイト”から、レース開始直後に贈られた”マジック1”という思いがけないプレゼント…
 後はただ、今シーズン何度も見せてきたように自らの走りに集中し、そしてチェッカーを受けることが最良の選択であることは誰の目にも明らかだった

 しかし、ロッシはストーナーに対し本気で牙を剥いた
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 ミリ単位でも間違えば飛んでいってしまいそうなリアタイヤを完璧にコントロールし、200マイルからのブレーキングポイントをラップごとに奥へ奥へと刻んでいった

 それでも、完璧なマシンとライディング、そして母国の偉大なるレジェンド達と熱狂的なファンに後押しされたストーナーの前に出ることはかなわない…
 ロッシが”予想通り”の走りに切り替えたのは、ファイナルラップに入ってからだった

 レース後には、いつもの”ハッピーマン”に戻っていたように見えたロッシの、レース中の異常なまでの獰猛さは何だったのか…

 その理由の一旦を垣間見せたのが、シャンパンファイトの後のパフォーマンスだったのではないだろうか

 ニーパッドを剥ぎ取り、眼下に押し寄せたファン達を煽りながらその中に投げ入れる姿…それは、あたかもイタリアで勝った時のようだった

 そしてパルクフェルメやインタビューで、笑顔の中に一瞬見せた鋭い眼光…

 そう、ロッシはストーナーに”貸し”があったのだ
 タイトルを奪還し、さらに連覇を目前にしながらも、絶対に取り返さなければならない大きな大きな貸しが…
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 半年前の彼のホームタウンGP、雨のムジェロ…
 そのロッシのために集まったティフォージ達に降り注がれたストーナーのシャンパン…
 
 これを償わせる方法はただ1つ、それはこの南半球の美しいサーキットで、イタリア国旗を高々と掲げ、その国歌を高らかに響かせること、そして故国の英雄の活躍を目の当たりにせんと集まった大観衆に、シャンペンシャワーを浴びせること…

 この日ロッシが、昨年のラグナセカや今年のカタルニアのような”カミカゼ”オーバーテイクを見せなかったのは、ストーナーがタイトル争いに絡んでいないから、という理由だけではないだろう
 
 脇役に甘んじてしまったイタリアの屈辱を晴らし、このオーストラリアでポディウムでの”主役”を演じるためには、ライバルのファン達をも納得させるような美しい勝利でなければ意味がないのだ

 そして何より、ストーナーとのバトルがこれで終わるわけではない
 この日あらためて感じたケーシー・ストーナーというライダーの凄さと、その素晴らしいライダーに”貸し”があり、それを取り戻す機会があるという”幸福”…

 ロッシの瞳には、2010年のフィリップアイランドのチェッカーの向こうに輝く碧い海が映っているようだった
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by taros_magazine | 2009-10-23 21:57 | motorcycle diary


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