忍野 '09 夏 "CODA"

c0041105_11531773.jpg “奇跡の川”
 それが自分にとっての忍野だ

 初めて訪れたときに目にした魚影、手にしたサイズと魚種、そして何よりその夜の“ロッドティップ”をめぐる出来事だ

 温泉裏のあたりでイブニングを楽しんだ後、駐車場に戻り帰り支度をするときにそのコトに気づいた
 『ティップがない!』

 おそらくはラインを外し、暗い木立の中を歩いているうちに抜け落ちてしまったであろうティップを、すでに闇に包まれた忍野の川辺でその日同行した仲間がみんなで探してくれた

 でもやっぱり見つからず、もうすっかり忘れかけていた頃にその電話があった
 『見つかったらしいよ』

 仲間の一人が忍野の有名ショップのオーナーに事情を伝えてくれていたのだ
 そして“奇跡”は起きた

c0041105_11554827.jpg 誰かがあの昼でも薄暗い木立の中で、細いティップを見つけた
 おそらくはフライフィッシャーであろうその人(そうでなければ“ただのゴミ”にしか見えないだろう)は、それを拾い上げると目に付きやすいように近くの看板に立て掛けた

 そこをまた別のフライフィッシャーが通り掛かる
 看板に立て掛けてあったティップを見つけた彼は、ちょくちょく顔を出すあのショップにそのティップを持ち込んだ
 『コレ、誰かが落としたんじゃないかなぁ?』

 それを聞いたオーナーはふと思い出した
 『もしかして…』
 そして電話機を手にした

 この奇跡的な体験は、釣りそのもの以上に自分の“忍野観”を決定的なものにした

 自分にとってこの湧水の流れは、まるでカトリック信者にとってのルルドの泉の聖なる水のようですらあった

c0041105_1154204.jpg だから、この日もいつもより少しだけ敬意を持ってやってきた
 
 足場の高い上流部用のほかに、聖なる流れに住む魚たちにふさわしいネットを用意し、奇跡の川で1日を過ごすつもりで…

 その新しいネットでいくつかのリリースをした後、車へ今まで使っていたスライド式の長柄のネットを取りに戻った
 『ない…』

 車の車体下に置いてあったネットは、跡形も無く消えていたのだ

 どこにでも売っている安物のネット…しかし、それ故に誰が持っていても不思議はなく、犯人探しなどする気にもなれなかった

 初めてここを訪れた日の、あの夜と同じ駐車場で消えてしまったネット…

 この程度の出来事は、きっとどこの釣り場でもあるごくありふれた話なのだろう
 しかし、勝手な考えだとわかってはいるけれど、この忍野でだけはこういう体験をしたくなかった

c0041105_11551260.jpg それでも、この川の流れに罪があるわけではない

 奇跡を起こしたのも、また罪悪を犯すのも、ここにやってくる釣り人…
 そして自分もまた、その中の一人だということ…これが今の自分の“忍野観”だ


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by taros_magazine | 2009-07-30 12:06 | fly fishing diary


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