2015 ラグビー・ワールドカップ
お互いが決勝トーナメント進出に向け、負けられない状況で戦うことになった日本とサモア
試合はサモアが一時退場者を2名出すほど激しい死闘となり、最後はサモアの反則で得たペナルティをうまく活かした日本が勝利した
ラグビーの世界では”格上”のはずだったそのサモア代表の主将 トゥシ・ピシは、試合直後のインタビューできっぱりと言い切った
『レフェリーの判定は公平だった。自分たちの"規律"がとれていなかった』
そして決勝トーナメント進出どころか、過去の同国のラグビーワールドカップ史上最悪のリザルトが現実味を帯びることとなったその試合後、彼らは日本のエース 五郎丸歩のもとを訪れた
彼らの目的…それは、終わったばかりの、サモアの選手にとってみれば屈辱的であったはずの試合の(サモアのメンバーで話し合って決めた)MVPを称える、小さな手作りのトロフィー渡すことだった
やはり、バレンシアでは何も解決しなかった
タイトル争いの決着も、グランプリを覆っているグレーな雲を晴らすことはなかった
それどころか、事態は悪化の一途をたどっている
決勝レースの上位争いをビデオでしか見ることのできなかった敗者は、チームメイトのタイトルに『八百長』という言葉を贈った
30ラップのレース中のほとんどをトップからコンマ5秒以内で走り続けたアグレッシブが売りの前王者は、一度もアタックすることなくそのまま2位でフィニッシュした
一旦は涙ながらに"スペイン連合"の恩恵を口にした王者は、一夜明けるとチームメイトを『速くもないし、もう勝てない年寄り』と罵った
地元スペイン勢の表彰台独占、そしてスペイン人の逆転タイトル獲得を目の当たりにしたファンがポディウムに送ったのは大きな拍手と口笛、そしてそれを上回るかと思えるほどの盛大なブーイングだった
ライダー、チーム、ファン、メディア…皆が出口の見えない暗闇の迷路の中で、自分の向かっている方向だけに光が見えてくると思ってバラバラに突き進んでいる
もはや誰かが正しかったということが証明されたり、誰かが間違っていたと認めるような解決法はあり得ないだろう
だからこそ、皆が過ちを認めなければならない
シーズンがクライマックスを迎える中で、コース外で他のライダーに対する疑惑を公言し、さらにコース上で怒りを爆発させたことを
タイトルが懸かっているライダーを相手に、序盤から1ラップに10回もオーバーテイクの応酬を挑むことを
ドライなら、転倒がなければ、などと弱点を認めようせず、勝った時の結果だけでタイトルにふさわしいと吹聴することを
相手が引かなければ共倒れするしかないようなオーバーテイクが野放しになっている現状を
そして、勝者を祝福せず感情のままにブーイングを浴びせたことを…
グランプリがスポーツである限り、王者は1人しかその存在を許されない
しかし、残りの全てのライダーには、良き敗者として皆から敬意を集められる機会が与えられる
そして今シーズンに限っては、良き敗者はチャンピオン以上の存在になれるはずだ
あの日、小さなトロフィーを受け取った五郎丸選手はツイッターでこう述べた
『敗者となった彼らから貰った贈り物は試合のMVPカップより価値があり我々もこんなチームになりたいと思えた。』